ただぼおっと座ってる時間。

政治の話はしない。でも、平凡な生活は知りたくなる。

 

今回はちょっとトンバン5人から離れた記事になるかもです。

元じゃにーずの草なぎさんが数日間ソウルに滞在する番組を観ました。宿泊していたのは龍山(ヨンサン)にある眺めのよいフラットで、一緒に滞在する同行者の方とシェアしていました。ユノさんが2010年だったか、M・ジャクソンのメモリアルステージを行ったときの会場がこの龍山だったので、自分もいちどだけ行ったことがあります。でも地下鉄の駅から会場までを歩いただけで、街の様子は知りませんでした。今回の放送を観て初めてどういった歴史を持つ場所なのかを知ることができたんですよねい。番組のなかでは日本人にとって、なかなかに厳しい場面もあったりして、同行していた某国営放送局解説者の方も(朝の番組でレギュラーだった)フラストレーションが徐々に溜まっていく様子でした。よくある観光・グルメレポートとは違って、それがソウルのリアルな一面を切り取ってる気がして感慨深かったです。

 

羽田からソウルまでは3時間かかりませんし、関西からだともっと近いんだとかで、KPOP好きならいちどはソウルへ行くっていうのが当たり前のようになっています。格安エアチケットを買えば国内旅行より安かったりしますもんね。まあ別に行かなきゃいけないわけじゃないんだけど、ここまで旅行条件が揃ってると「ちょっと行ってみよっかな」って感覚ですねい。自分はトンバンのライブに合わせていつも1人でふらあっと行って、観て(あのカオスでww)、ぼおっと歩いたりカフェに座ったりして過ごすソウルでした。たまにソウル在住の友達が一緒にごはん連れて行ってくれたり、流行のエリアを教えてくれたりしましたが、基本は自分の気が向くままにてくてく歩いていたので、三清洞/北村のエリアがちょうどよかったです。そのエリアにあるカフェやレストランは比較的落ち着いていてゆっくりできたので、ただ座って周りのテーブルで話す人たちの様子を観たり、話の内容が全くわからないままのハングル会話を聴いたりして過ごしてました。そんなときにふと聞こえるのは、よくドラマなんかで女性主人公が大声で話すあのキツイ発音のハングルじゃなく、すごく穏やかなハングルの発音でした。ただ静かに会話しながらお食事されるご夫婦とかもいらしたりして、自分のハングルに対する一方的な先入観みたいなものに気づくこともありました。

 

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三清洞のカフェ

トンバン5人の映像から見える韓国やソウルは、言ってみれば”ひとに見せるための”作られた世界だと思っていたので、いったい平凡なごく普通の日常生活ってどんなものなんだろうと考えてました。もちろん人によって千差万別だし、生活習慣も違ってはいるんでしょうけど、やっぱりトンバン5人がどんな文化や生活を送る国で暮らしてるのか知りたかったんですよねい。それでソウルに住む韓国人の友達やその知り合いと逢うと例えば学校生活ってどんな感じ?とか、秋夕(チュソク)ってほんっとに今でも親戚大集合するの?とかいろんなことを尋ねました。 幸運なことに彼女は日本語がしっかりできるので、時々「韓国語ではこう言いますよ」って教えてくれたりしながら答えてくれました。そんな会話のなかから、自分の豊かな将来のために海外移住する学生やビジネスマンがとても多いことも現実として知ったりしたのです。彼らの祖国の複雑でジレンマを抱えるような実情と、歌や踊り・アートに見る豊かな芸術性はとても強烈です。友達が「韓国人の感情は瞬間に激しくなりますから。強い衝動に駆られて抑えきれないところがあるんですよ」と話してくれて、また違うひとは「韓国の男が言い合いになったら、いきなり殴り合いです。日本人みたいに肩を押しあったりしません(笑)」って言ってました。なるほど。なんかわかる気がする。

「なんでアイドルとかも若いときから超高級マンション購入したり投資したりで不動産に関わったりするの?」と聴いたときの返事がとても印象に残りました。彼女いわく、韓国人は自分で自分の生活や将来を守ることが当然になっていると。国や誰かに期待したりお願いするよりも自分で蓄財して守る。それはきっと長い歴史の流れのなかで深く根付いてきた慣習なのだろうと思います。いつも周辺の国や政治に翻弄された過去から、今、このときに、できる限りの財産を自分自身で築いておきたいと考えるんですよねと話してくれました。そして「政府はしょっちゅう変わるから信じてないんですよ」と苦笑い。「へえ....だから移住しちゃうのか(´・_・`)」日本だって最近は何が正しいかウソじゃないのかわからなくなってきてますけど、ここまで公的な援助を期待しない・信じない生活にはなってないと思います。

KPOPアイドルがデビューして人気があがってくると、休日はおろか常識外のスケジュールを組んで過酷な活動を強いられるという話は今も絶えません。そしていつもトラブルになるのは収入の低さ。つまり所属事務所から渡される額。ここにもさっきの話に繋がる「今できる限り稼いでおく=めいっぱい働いてもらう」ってことになり、さらに彼女の言葉、「その先は考えない。とにかく、今」がその答えになるのかなと想いました。仕事の隙間にさらにまた仕事を入れるスケジュールでは、いくら10代20代のアイドルでも遠くない日に体調を崩したりケガを繰り返すことはわかりきっています。でもそこにはきっと30代以降の彼ら・彼女たちを考えたビジョンはなく、とにかく人気のある今こそが稼ぐときだという事務所のスタンスがあるのでしょう。

友達は日本のアイドルや俳優が大好きで、そして30代を過ぎてもファンが離れず変わらない人気を持つ日本のアイドルたちが本当にうらやましいですと言っていました。女優さんでも女性アイドルでも、結婚してしばらく芸能活動をお休みしてもまた復帰して活動することができるし、ファンもそれを待っていて歓迎するのを観たとき、最初とても驚いたとも言っていました。

そんなふうに淡々と語られる話を、ソウル市内のカフェに座って聴いていました。「ソウルにカフェが多いのは、手っ取り早く開店できて、またすぐにやめることができるからですよ。開店のための公的な認可も簡単なんです」

 

ひとりで三清洞のカフェに入り、窓の外を歩く人たちを眺めながら友達の話を想い出していました。このお店も来年になればまた新しいお店に変わるのかもしれない。さっき買った靴屋さんもお店のカードをくれたけど、半年後にはもう違う業種のお店になっているのかも。より稼げる場所へ、さらに高収入の業種へ、いつもそう考えながら移っていく人たち。以前暮らした英国で「私、日本人の感覚のほうが合うんだと思う」とぽつんと呟いたどうやっても生粋イギリス人(笑)の友達がいました。「この国ではとても疲れるの。周りの人たちが理解できないことがある。でも日本人と話すととても落ち着く」と。きっと韓国・ソウルの街でも、そうやって自分の感覚と周囲のズレを苦痛に感じながら暮らしている人たちもいるんでしょうねい。

 

夕方になり、そろそろホテルへ帰ろうかなとお店を出て歩きだすと、帰宅を急ぐひとたちも多くなっていました。バス停に並ぶひと、地下鉄の駅へ急ぐひと、どこの国にもある平凡な風景。トンバン5人もデビューする前はこんな大勢のひとたちに紛れながら暮らしていたんだなあ。そう思ってまた立ち止まって、夜に向かうソウルの風景を眺めていました。そうやってただ、ぼおっとする日。自分は旅先のそんな日がとても好きです。